2024年11月13日
「日本一みらいにつながる」袋井市の学校給食
文教厚生常任委員会 行政視察の2日目は、静岡県袋井市へ。
江戸からも京都からも数えて27番目、「東海道五十三次どまん中」をキャッチフレーズとする袋井市は、平成5(1993)年に「日本一健康文化都市」を宣言してから、「健康」を柱としたまちづくりを進めてきており、2021年には、マレーシア・クチン市で開催された「第8回健康都市連合国際大会」において、WHO(世界保健機関)とAFHC(健康都市連合)から表彰を受けたほか、2023年には、厚生労働省の「第5回健康寿命をのばそう!アワード」において、生活習慣病予防分野と介護予防高齢者生活支援分野の2つの部門で優良賞を受賞(2部門の同時入賞は全国初)するなど、市民ぐるみで取組みを進めています。
こうした評価に含まれる、園児児童生徒の学校給食においては「日本一みらいにつながる給食」アクションプランを掲げ、地場産物の活用推進(地産地消)や心と体の健康づくりの取組みを展開されていることから、新給食センター計画を進める敦賀市においても生かすべく、その状況などについて視察した次第です。
本日もレポート的な内容となりますが、お伺いしたポイントを以下に記載しますのでご覧ください。
※メインの説明者は、袋井市教育委員会 おいしい給食課 おいしい給食推進係の石塚係長
【到着後に試食させていただいた昨日の給食。食材それぞれを学びにつなげていることにも感心しましたが、何をおいても量も味もバッチリでした。】
◉袋井市においては、平成20年の1市1町の合併で3給食センター(中部学校給食センター、袋井給食センター、浅羽給食センター)を有している。
<課題>
◉建替えを終えた中部学校給食センター以外のセンターは、建設時期が平成2年、平成4年となっており、今後どのように施設整備していくか。建設資材の高騰もあり、建替えに向けた財源の確保を進めつつ、ソフト面ではアクションプランに沿って取組みを進めている。
◉※給食費の問題。100%保護者負担だが、物価高騰による食材の値上がりもあり、今後の給食費のあり方について、年内を目処に検討を進めている。
※(袋井市の給食費)幼稚園・こども園:240円、小学校:280円、中学校:350円
※(参考)敦賀市の給食費(センター方式) 小学校:249円、中学校:251円
<取組みの内容>
◉「日本一みらいにつながる学校給食」アクションプラン
3つの給食センターから1日約9,250食を公立こども園・幼稚園、小中学校に提供しており、各給食センターの取組は、WHO(世界保健機関)をはじめ、多くの機関から表彰されるなど、「日本一の学校給食」と自負する取組を積み重ねている。しかしながら、学校給食を取り巻く環境(アレルギー等)や保護者等の関心事はますます複雑、多岐に渡ってきており、これまでの学校給食運営を見つめ直し、「日本一健康文化都市を支える日本一の学校給食!!」を目指し、今後の取組をとりまとめたアクションプランを令和5年8月に策定している。
◉3センターには委託しており、学校給食法 第8条 学校給食実施基準「学校給食実施基準に照らして適切な学校給食の実施に努めるものとする」、第9条の安全衛生面、第10条「地域の産物を学校給食に活用すること」など、法令の定めに照らし、的確且つ積極的に対応する姿勢で取り組んでいる。
◉児童生徒268名を抽出した食事調査結果にて、①全員が食塩の摂り過ぎ、②お菓子や甘い飲み物の摂り過ぎ、③ビタミン・ミネラルの不足 が顕著なデータが得られたことから、これを受け、栄養素の過不足を分析の上、成長に合わせた栄養価を提供。
◉アクションプランの各項目については以下の通り。
①徹底した衛生管理に基づいた給食の提供。微酸性電解水を用いた生野菜の提供(珍しい)
②地場産物の積極的な提供。
・現在、17戸の生産者から市内産食材を直接購入
・使用する野菜の3分の1は市内産であり、約10年で使用金額ベースで10倍、重量ベースでは13.8%から51%に増加
・地場産物使用日数は14日から毎日に増加
・使用品目は市内産15品目目から46品目に増加
・地産地消コーディネーターはおらず、おいしい給食課職員等が生産者と連絡調整を図りながら実施
※地産地消が進んだ理由に「農作物保存庫の確保」(市内2箇所:JA倉庫を借用)がある
③食品ロス解消及び循環型社会の構築(SDGs)
・規格外の野菜を活用するなど、食品ロス解消に努めている
④実体験を通じた食育活動の推進
・各園・学校の食に関する指導の年間計画と連携
・年間献立計画と学校教科を関連づける
・子どもたちの市内産野菜の収穫体験(生産者と一体になった取組み)
・興味関心を引くことで、生産者への尊敬の念や郷土愛を育む
・日々の給食に「狙い」がある
【昨日の給食の献立。毎日、食べる前にこうしたスライドで説明があり、さらに食材に関する知識の紹介もしているとのこと。】
⑤食物アレルギーと偏食への対応
・3給食センターに、専用の食物アレルギー対応調理室を整備し、施設の状況に応じた対応食を提供
・日頃から専門医や救急機関と連携
・令和5年度の食物アレルギー対応実績としては、園児児童生徒8,805人のうち、アレルギー対応食提供者106人
⑥保護者・教職員への積極的な情報発信
⑦学校給食に関する教職員の意識向上
・教育委員会の3大プロジェクトとして「日本一みらいにつながる学校給食」を掲げている
・園や学校と連携を図り、各センター栄養士の学校訪問回数は年間1200回以上(延べ訪問クラス数)
◉センター委託業務に関しては、「手作り」することで委託調理員の人数は増となるが、材料の直接買い付けなどでコストダウンを図っている。
◉栄養教諭栄養職員(県費負担職員)は基準通りに配置。おいしい給食課の栄養士4名は、1センターに1名(計3名)、1名は子ども園と総合的な役割を担っている。ここ10年で6人採用(毎年、県に加配を要望しているが叶っていない)しており、献立も今は市側で対応している。
◉給食の目指すところ=食育は健康寿命を延ばすため
◉そして何より「日本一」を掲げて取組むことで、職員の誇りややりがいにつながっている
以上、石塚係長より丁寧な説明をいただいた後、質疑の時間も通じ、取組みへの理解を深めた次第です。
細かな点も伺いましたが、先の「職員の誇りややりがい」との言葉にあるよう、石塚係長はじめ、委託事業に係る方々を含め、「日本一の学校給食」に向けて取り組んでいる様子が分かったことが大きいと感じました。
昨日、川崎市でもそうでしたが、やはり「人」と「情熱」無くして事は成せず。
敦賀市においては、今後進めるハード整備に傾注しがちですが、学校給食に込める「思い」、人員配置や体制などのソフト面もしっかりと確認していかねばと感じた次第です。
昨日ご対応いただいた、おいしい給食課の皆様、鈴木議長、議会事務局の方々には大変お世話になり、心より御礼申し上げます。
【視察にお伺いした袋井市中部学校給食センター】