「地元創成看護」という考え方

ブログ まちづくり

会期終盤の敦賀市議会は昨日、予算決算常任委員会を開催。
 
補正予算に係る各分科会長からの審査報告、討論、採決と進み、「第39号議案 敦賀市一般会計補正予算(第2号)」ほか2件について、原案通り認めるべきものと決しました。
 
今定例会も25日(火)の最終日を残すのみとなりましたが、最後まで注視いただければ幸いに存じます。
 
さて、昨日夕方は、敦賀市立看護大学で開催された講演会に参加。
 
同学では、大学と地域がともに育ち、人々の健康と福祉の向上に資するため、次世代看護の役割を議論し、教育研究の更なる発展に繋げる機会とすべく、本学看護系教員を中心とした「つるが発 次世代看護 あり方研究会」を立ち上げたとあり、研究会では、地創生看護や看護ケアの本質について学びを深め、併せて地域と協働した教育研究活動を積極的に展開したいと考えているとのこと。
 
その上で、今回の同研究会主催の講演会テーマは「地元創成看護という考え方」
 
お招きした先生は、日本における看護界の第一人者であり、令和6年春には「瑞宝中授章」を受章された「南裕子」先生。
 
瑞宝章は公務等に長年にわたり従事し、成績を挙げた方に授与される勲章ですが、南先生におかれては、日本看護協会会長、日本災害看護学会理事長のほか、国際看護師協会会長、世界看護科学学会理事長をはじめとする多くの学協会、日本学術会議の会員等の要職を歴任し、国内外の看護学の発展および看護教育に多大な貢献をされた方であり、南先生の話を聞こうと、本講演にはオンライン参加も含め、約300名の申込みがあったとのこと。
 
私はリアルに、看護大の教室にて拝聴した訳ですが、会場は教職員や学生さん、関係者で満員のなか講演がスタートし、南先生のやさしくも信念を感じる語り口のもと、約1時間半拝聴した次第です。
 

【会場内は撮影禁止でしたので、開催チラシを掲載いたします。】
 
「地元創成看護」と聞きなれない言葉に関して、まず「地元」については、事前に著書を調べると、以下の考えが示されていました。
 
「地方」という語は使いたくありませんでした。なぜなら「地方」の対になるものとして「東京」が想定されているからです。中央に対しての「地方」という消極的なスタンスは取りたくなかった。「地域」という語もまた不十分に思われました。個別性が薄まること、すでに多様な使い方がされていることなどが理由です。
 
また、「創成看護」に関しては、ご自身の経験として、阪神淡路大震災の被災地に入ることで、初めて兵庫県のことが分かったよう、実践の現場を持つことが看護学にとって大事なこととの基本的考えのもと、「創生」ではなく「創成」としたのは、地元はもとからそこにあるはずなのに,新たに生まれるとの表現に違和感を覚えたことから、地元のニーズに応じて自ら創っていくニュアンスを込めて「創成」としたとありました。
 
講演では、ご自身が学長を務められた高知県立大学(平成22年4月設置)で、健康長寿センターと地域教育研究センターを両輪に、全学を挙げて地域志向の大学「県民大学」として、本学への積極的なアクセスを県民に呼び掛け、平成24年には「地域教育研究センター」を設置し、地域と大学が共に生きていくための協働関係を構築したこと。
 
それまで、社会貢献は教職員が役割を担っていたが、学生がこれを担うことで、学生が(高知県内の)地域を活性化させたこと、なぜ今「地元創成」看護学が必要なのか、「地元創成」とは、係る特定の「地域や社会集団(地元)」が成立し、主体的、持続的に課題解決に向けた方策を創っていくことであること。
 
「地元創成看護学」とは、地元(home community)の人々の健康と生活に寄与することを目的とし、社会との協働により地元の自律で持続的な創成に寄与する看護学であるとし、松原客館などを例に、多くの歴史を有し、ユダヤ難民を受け入れた港を持つここ敦賀は大変素晴らしいまちであり、地元への愛着をもって、「地元ファーストだけど、世界とつながっている地元」をめざして取り組まれる旨、期待の言葉があったところです。
 
なお、事前に調べた中で、「地元創成看護学」はこうも述べられていました。
 
「地元創成看護学」は、普遍的ではない看護学の在り方を求めます。目の前にある現象から物事の真髄を見極めるという経験的(エンピリカル)な方法は、どの学問領域にも共通します。もちろん演繹的な方法もあるわけですが,私は前者を大切にしたい。それも、自ら進んで経験的な方法を行うことを。学生たちに地元創成看護学を教えるに当たっても、学生たちが自ら考え、解決したり、課題に跳ね返されたりする経験を通して、看護とは本当はどういう営みなのかを見いだしてほしいです。
 
この言葉を聞いて、思い返すのは、元日にあった能登半島地震による津波警報発令の際のこと。
 
高台にある同大学に避難された多くの住民に対し、車1台1台に「どうぞ中にお入りください」と声を掛けて回られたのは看護大学の学生ボランティアさんでした。
 
この対応に、避難されていた高齢者の先輩が大変感激され、涙ながらに私に教えてくれた訳ですが、こうした「地元」との結び付きがまさに「地元創成看護学」と通ずるのではないかと感じたところです。
 
講演の結びに先生からは、「大切なのは、大学のファンをつくること」、「卒業生が愛着を持てるような教育をすることが重要」とありました。
 
地元への定着=地元への貢献ではなく、今回お伺いした「地元創成看護学」という重要な視点を認識のうえ、今後の市立看護大学の取組みを応援するとともに、自身の立場においては、何か地元と大学を「つなぐ」役割ができないか考える次第です。
 
最後に、豊富なご経験から、多くのご示唆をいただいた南先生、このような貴重な機会を設定いただきました敦賀市立看護大学の皆様に感謝申し上げます。