「公表」する勇気と「受け入れる」勇気

ブログ

昨日は、敦賀で二人目となる新型コロナ新規感染者との発表。
 
福井県の会見を確認しましたところ、50歳代の女性、2週間以内の県外滞在歴なし、濃厚接触者は同居の1名。
 
ここまでは通常通りですが、勤務先の企業から公表することの許可を得ているとのことで、女性は「奥井海生堂」の工場に勤務、その工場に勤める約50名のうち濃厚接触の可能性などについては調査中とまで発表されました。
 
また、この奥井海生堂さんは、自社のホームページにも「弊社における新型コロナウイルス感染者の発生とお詫び」と題し、確認出来ている陽性確認の状況に加え、保健所の検査に全面的に協力し今後の感染防止対策に努めることなどが掲載されています。
 
この対応を見て思い出すのは、以前に嶺南地域で初となった若狭町での感染発症の際、陽性確認者と同居の兄が勤める「カモコン」(美浜町)さんの対応です。
 
「カモコン」さんは、関係性があると見るや否や、会社にとってマイナスイメージになるかも知れない恐れに捉われることなく企業名を公表し、同じように自社ホームページにも掲載するなど、地域住民に対し、「迅速に知らせる」ことを最優先した対応を採られました。
 
企業名を伏せず、逆に公にすることで広く地域住民にお知らせすることは、誤った情報や推測による混乱を防止するとともに個々の感染防止対策の意識を高める観点から有効であり、これぞ地元に根ざす企業の責任感ある対応だとこのブログでも称賛した訳ですが、これに続き、今回は奥井海生堂さんのこの対応。
 
明治4年(1871年)創業、昆布の老舗として140年以上の伝統を持ち、近年では通販サイトなどでも販路を拡大している地元企業のその名前は、市民にも広く浸透しているところであり、驚かれた方も多かったことと思います。
 
このコロナに関する「公表」に関して、福井県においては、7月の専決処分において、新型コロナウイルス感染に伴う従業員のPCR検査や施設名(企業名)・所在地の公表に協力したり、公表しなくても利用者名簿を提供した事業者に50万円を支給、さらには、14日間を基本に一定期間休業した場合、法人は50万円、個人事業主には20万円を加算する「クラスター防止協力金」制度を創設しています。
 
杉本福井県知事は、この「クラスター防止協力金」について「経済活動全体を止めるのは影響が大きい。個別企業に区切って休業を要請し、感染者を早く見つける」と制度趣旨について述べています。
 
今回の奥井海生堂さんが、どこまでの対応を行うかまでは把握しておりませんが、私は先に述べた自身の考え並びに協力金の制度趣旨に則る対応であると評価するところであります。
 
あとは、この公表を狙い通りの感染防止対策に結びつけられるかどうかは、社会全体の認識ひとつ。
 
福井県内においては、病院なども含めると、公表した企業、団体、施設は5月のGW明けの時点で40以上に上っていましたが、会社や社員たちが誹謗中傷や差別的な対応に遭うケースが相次いだとの記事が以前の福井新聞にも掲載されていました。
 
同新聞記事によれば、企業や社会の危機管理に詳しい横浜国立大の野口和彦客員教授は「企業が顧客や社会を守ろうと迅速に情報を開示することは重要」とした上で「企業の公表に対して社会や市民がどういう反応をするかも、社会運営にとって極めて大事」と指摘しています。
 
また、「感染症対策を怠っていたなら批判されても仕方ない面はあるが、公表したことに関しては評価されるべきだ。市民はその視点を誤ってはいけない。公表したことで企業が誹謗中傷に遭うと、事実を公表しなくなってしまう」と警鐘を鳴らすと同時に、「今回のウイルス禍は初めてのことで、企業も社会も市民も学んでいく必要がある」と話しています。
 
まさに今回の場合もこれに学び、「公表をプラスに」生かさなければいけない訳であり、私はそれが出来る「市民力」が、この敦賀市にはあると考えるところです。
 
奥井海生堂さんのホームページにある現社長の挨拶にはこうあります。
 
『食材にたずさわる家業ゆえに「食は身と心を養うもの」と常々教えられてまいりました。昆布の出汁の香りには、本当に心が癒されます。心の豊かさは食環境から養われるものと痛感します。食生活の乱れが叫ばれる今この時代にあって、昆布商として、社会的にも伝え残すべきものは大きいものと自負しております。』
 
明治中期から曹洞宗大本山永平寺の御用達となった歴史や敦賀と昆布の伝統を支えるとの観点においても、市民の皆さまには何卒ご理解とご協力のほど宜しくお願いいたします。
 

【奥井海生堂が明治期に配布していた引札(同社ホームページより)】