「リサイクル燃料備蓄センター」が事業を開始

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先般、13年ぶりの原子炉起動を喜んだ東北電力の女川原子力発電所2号機。
 
既に報道にあるよう、11月3日、発電機試験併入中に、原子炉内の中性子を計測する検出器の校正用機器を原子炉内に入れる作業を行っていたところ、途中で動かなくなる事象が発生したため原子炉を停止。
 
東北電力はホームページで、「再稼働(発電再開)に向けた今回確認された事象の原因調査を行い、引き続き、安全確保を最優先に、一つひとつのプロセスをしっかりと対応してまいります。」とコメントしており、ここは焦ることなく、万難を備えて工程を進めていただきたいと思います。
 
一方、原子力に関しては、東京電力福島第一原子力発電所2号機で本年9月から行われてきた「※燃料デブリ」の試験的な取り出し作業が完了。
 
※燃料デブリとは
事故当時、1〜3号機は稼働中だったため炉心に燃料が格納されていました。事故発生後、非常用電源が失われたことで炉心を冷やすことができなくなり、この燃料が過熱、燃料等が溶融しました。その溶融した燃料等が冷えて固まったものを燃料デブリと言います。
 
東京電力によると、7日午前11時40分にデブリを格納した容器を専用のコンテナに移し、試験的取り出しが完了したとあり、廃炉の完了に向けては、総量で880トンにのぼると推定されるデブリの取り出しが最大の難関とされ、今回取り出したのは数グラムとみられるものの、今後の分析で得られるデータは、本格的な取り出し工法の検討に欠かせないとしていて、事故から13年半を経て廃炉は新たな段階に入ることになります。
 
ご参考まで、詳しくは東京電力HP「燃料デブリ取り出し状況」のページをご覧ください。
 
 →「燃料デブリ取り出し状況」のページはこちら
 
また、原子燃料サイクルの観点から大きなニュースとして、原子力規制委員会は11月6日、リサイクル燃料貯蔵(RFS)が青森県むつ市に立地する「リサイクル燃料備蓄センター」(むつ中間貯蔵施設)について、使用前確認証を交付。
 
同施設が、実質的な「事業開始」を迎えました。

【事業開始を迎えた「リサイクル燃料備蓄センター」のイメージ図(RFSホームページより引用)】
 
むつ中間貯蔵施設は、原子力発電に伴い発生する使用済み燃料(東京電力、日本原子力発電)を再処理するまで、最長50年間(順次設置する施設ごと、キャスクごと)、安全に貯蔵・管理するものですが、1990年代後半、使用済み燃料貯蔵対策について、官邸レベルで議論されるようになり、サイト外貯蔵に関しては「2010年までに確実に操業開始できるよう、国および電力事業者は直ちに所要の制度整備、立地点の確保等に取り組むことが必要」との報告書がまとめられました。
 
こうした背景も踏まえ、2000年には、むつ市より東京電力に対して立地に係る技術調査の依頼があり構想が具体化し、その後、施設の建設工事が進捗するも、2011年の東日本大震災発生により停滞。
 
原子力規制委員会の審査を経て2020年11月に許可、RFS他事業者は2024年8月、青森県およびむつ市との間で、むつ中間貯蔵施設に係る安全協定を締結するなど、一つひとつステップを進め、ようやく「事業開始」となったものであり、地域の皆様のご理解とご協力に感謝申し上げるとともに、これまでの関係者の方々のご尽力に敬意を表する次第です。
 
RFSでは、「安全最優先で事業に取り組むとともに、事業の透明性を高め、地域に根差した事業運営に努めていく」とコメントしていますが、使用済み燃料を再処理し、回収されるプルトニウムをMOX燃料として加工した上で、有効利用する原子燃料サイクルの推進は、わが国のエネルギー政策の基本的な方針。
 
先の衆院選福井選挙区で複数の候補者が述べていた「使用済み燃料の問題が解決していないのに、リプレースなど無責任(進めるべきではない)」との考えに対しては、今の日本のエネルギー事情を考えれば、バックエンドのことを盾に、新たな電源開発をしないことこそが「無責任」と思うところ。
 
「原子力か再エネか」の不毛な議論ではなく、「原子力も再エネも」活用すべきとの考えと同様、原子力関連事業を進めるには相当な期間を要することを踏まえた上で、最終処分地選定を含む「バックエンド側も」、リプレースや新増設など「フロントエンド側も」同時並行的に進めることこそが、とりわけ国の舵取りをする政治の責任であると、RFSの「事業開始」にあたり、改めて思うところです。